心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアはベッドに横になって布団を頭からかけた。
おやすみと言ったものの、ドキドキと激しく動く心臓のせいで眠れる気がしない。
それでも、心は幸せでいっぱいだった。
自分の体から黄金の光が静かに漏れ出していることに気づかないまま、マリアは目を瞑って幸せに浸っていた。
次の日の朝。
身支度を整えてもらっているマリアは、部屋の中がいつも以上にピカピカなことに気づいた。
大きな窓の上のほうも、小さな鏡や扉の取っ手までも、すべてが磨き上げられたばかりの新品のように輝いている。
「……なんだか今日はいつもよりさらにお部屋が綺麗だね」
「そうなんですよ! 実は、このお部屋だけじゃなくて他のお部屋もなんです。私たちの使用人部屋も、調理場も、廊下も玄関も、すべてのお部屋がピカピカなんです」
少し興奮気味にエミリーが答えた。
それに続き、他のメイドたちも次々に今朝の異常な状態の報告をしてくれる。
「お庭もです! この時期には咲かない花が咲いていたり、とっても綺麗なんですよ」
「実はこの近くの農家もらしいです! 今朝届いたお野菜がとても新鮮だったって料理人が言っていました」
「それに、私たち使用人も怪我が消えていたり熱が下がっていたりと、みんなの病気も治っていたんです」
みんな目を見開きながら、エミリーと同じく興奮気味に報告してくる。
そのあまりの迫力にマリアは「そうなの?」と言いながら戸惑っていた。
みんなが、まるでマリア様のおかげですと言わんばかりの顔をしているからだろう。