心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
100 捕まった令嬢
「マリア様! すごいです!! 過去最大の量です!」
王宮の研究室で、いつものように研究員たちが口を揃えて褒めてくれる。
治癒の光を保存するための容器はすぐにいっぱいになってしまい、今は自然と溢れる微量な光のオーラが研究室と研究員たちの顔色を明るくしている。
クマが酷く青ざめていた研究員たちの肌は、見たこともないくらいにツヤツヤだ。
「今日はやけにパワーが強いみたいなの」
「そうなのですね。ヴィリアー伯爵様といらっしゃったので驚きましたが、マリア様がお元気そうで良かったです」
「あはは……」
そう。なんと、今日はグレイも一緒に王宮に来ているのだ。
研究室に行きたいと伝えたところ「俺も行く」と言い出し、今はレオと一緒に研究室の扉の前で待ってくれている。
まるで護衛騎士のようなグレイの姿に、研究員たちはみんな目を丸くしていた。
まさかお兄様が一緒に来てくれるなんて、私も驚いたけど……。
嬉しいような恥ずかしいような気持ちだ。
居た堪れなくなったマリアが「じゃあ……」と立ち上がったとき、若い男性研究員が話しかけてきた。
「昨夜のことで、我々はマリア様のことをずっと心配していて……。今朝、笑顔でいらっしゃったので本当に安心したんです」
「昨夜のこと?」
「ロッベン公爵令嬢とガブール国の王太子が、共謀してマリア様を狙っていたと……」
「え?」
若い男性研究員がコソコソと話すと、周りにいた人たちも無言でうんうん頷いた。