心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
この話はこれで終わりだ、とでも言いたげなグレイの態度に、マリアは反論するのをやめた。
レオが大人しくしているということは、きっとグレイと同じ意見なのだろう。
この2人に聞いても教えてもらえない……どうしたら……。
そのとき、マリアは幼い頃の記憶を思い出した。
エドワード王子と一緒に研究室と間違えて行ってしまった場所……グレイの母親であるイザベラがいた場所。
あの場所がまさに地下牢だったはずだ。
あそこなら、覚えてる!
マリアはグレイとレオのあとに続いて階段を上がり、王宮内の広い通路に出た瞬間──ダッと勢いよく走り出した。
呆気に取られた様子のグレイとレオは、間を置いてすぐに追いかけてくる。
「マリア!」
2人からの呼びかけに答えずに、マリアは前を向いて走り続ける。
ここからそう遠くない場所。
目的の階段を見つけるなり、マリアは急いで下りていった。
地下に到着すると同時に追いつかれ、レオに捕まってしまった。
ガシッと後ろから腕を掴まれて、マリアの足が止まる。
「レオ、離して!」
「ダメだよ! 落ち着いて!」