心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
レオの後ろには、呆れた顔をしたグレイが立っている。
これではフランシーヌに会うことはできない……とマリアが諦めかけた時、階段の上から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「マリア!」
「! ……エドワード様!? なんで……」
走ってきたのか、肩で息をしているエドワード王子が怒った顔で階段を駆け下りてくる。
「研究室に行こうとしたらマリアが走り出したのが見えて……。何やってるんだ!?」
「お願い、エドワード様! フランシーヌ様に会わせて! 彼女、悪いことなんてしてないよ」
マリアの言葉を聞いて、エドワード王子の目が鋭く吊り上がる。
それはグレイも同じで、心底不快そうに顔を歪めていた。
「悪いことなんてしてない? マリアを騙して王太子のところに連れて行ったんだぞ? 処刑してもおかしくないほどの重罪だ」
「それはアドルフォ王太子に頼まれて断れなかっただけで……」
「その時点であの女はマリアよりも王太子を優先させたんだ。十分この国の裏切り者だろ」
「でも、私は何もされていないし……」
そう言った瞬間、この場にいた男3人がカッとなって一気に反論してきた。
「俺達が行ったとき、マリアはあの王太子に押し倒されていただろ!? あれが何もされてないって言うのかよ!」
「そうだよ、マリア。あれは俺だって許せないよ」
「王太子でなければ、その場で即首を斬ってもらっていた」
エドワード王子の発言にレオが全面的に賛成している。
グレイに至っては、恐ろしいことをさも当然かのようにズバッと言いきっている。