心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「俺達が見つけていなかったら、どんな目に遭っていたかわかってんのか!? そんな状況を作ったあの女は絶対に許さない」

「…………」


 ギラリと目を光らせる王子がどれほど本気で怒っているのか、幼い頃から知っているマリアにはよくわかる。
 けれど、なぜフランシーヌがそんな行動をしてしまったのかを考えるとどうしても憎むことができない。



 フランシーヌ様はエドワード様が好きだから。
 だからきっと邪魔な私を……。



 マリアがベティーナに対して感じていたあの暗く嫌な気持ちを、フランシーヌはマリアに感じていたはずだ。
 邪魔なマリアをどうにかしたいと思ってしまった気持ちだけは、理解できてしまう。

 苦しんでいたフランシーヌの気持ちと、今その好きな人から憎まれている彼女のことを考えると、マリアは怒りよりも哀れんでしまうのだ。


「……お願い。フランシーヌ様に会わせて。もう捕まっているんだし、別に会うくらいいいでしょ?」


 これだけ反対されても引かないマリアを見て、エドワード王子がグッと歯を食いしばる。
 いつもニコニコしているマリアが、めずらしくキリッと強い目つきで話しているからかもしれない。

 それ以上3人は声を荒げることはなかった。


「……わかった。少しだけだぞ」


 はぁ……というため息と共に王子が許可するのを、グレイが気に入らなそうに目を細めて見ていた。
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