心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 母親のエマは、自分の子どもがそのような扱いをされていてもジュード卿を止めはしなかったし、胸を痛めてもいない。

 マリア自身から悲痛な感情が出ていないことも理由の一つではあったが、この頃のエマはすっかりジュード卿にコントロールされていたからである。

 彼のやることに口を出さないどころか、不満にすら感じていなかった。

 マリアとは、屋敷にやってきた貴族を治療させる時にだけ会い、それ以外は放置。
 誰とも会話という会話すらしないまま、3年間ほぼ1人でマリアは生きてきた。


 6歳の誕生日など、マリアは覚えていないのではなく知らなかったのだ。
 教えてくれる人などいなかったし、日にちの感覚すらマリアにはわからなかった。

< 74 / 765 >

この作品をシェア

pagetop