心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「王太子をすぐに捕まえることはできない。マリアが傷を負ったわけでもなく、ただ話していただけだと主張されているからな。部屋に騎士がいたことで、2人きりではなかった証明にもなってしまっている」

「……そう。じゃあその主張を信じていいよ。その通りだもん」

「お前な! 自分が押し倒されたのを忘れたのか!?」

「でも、私は助けてもらったから何もされてないよ。本当に話してただけだよ」

「それは結果論で──」

「結果論でも!!」


 めずらしくマリアが大声を出したので、エドワード王子は驚いて言葉を止める。
 フランシーヌの様子を見るためにしゃがんでいたマリアは、王子を睨みながらスッと立ち上がった。


「結果論でも、私は無事なの。何もされていないの。それなのに、こんなことをするなんて……」

「あっ、マリア!?」


 マリアは王子の止める声を無視して、フランシーヌの傷を綺麗に治した。
 汚い牢の中も清潔になっている。

 体の痛みがなくなったフランシーヌは、呆然としながらマリアを見上げている。

 マリアはそんなフランシーヌから目を離し、再度エドワード王子に顔を向けた。
 さっきまで眉を吊り上げていたマリアだが、今は泣きそうな顔になっている。


「これは誰のための罰なの? 国のため? 私のため? ……私は、こんなことをされても全然嬉しくない」

「!」

「嬉しくなんてない。……苦しいだけだよ。エドワード様……」


 マリアの瞳からポロッと涙が落ちる。
 そのとき、フランシーヌが「ごめんなさい……」と小さな声で謝った。
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