心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
気づけばボロボロと大泣きをしていたフランシーヌは、体を震わせながら床に頭をつけて何度も何度もごめんなさいと繰り返している。
マリアが「もうやめてください」と頼んでも、フランシーヌは謝るのを止めなかった。
「…………わかったよ」
そんな2人の様子を見ていたエドワード王子が、どこか納得のいかない顔でボソッと呟く。
マリアとフランシーヌは、こちらを見下ろしている王子をそっと見上げた。
「フランシーヌ・ロッベン。金輪際、聖女マリアに近づくことを禁止する。もちろん、俺の婚約者候補からも降りてもらう。俺にも二度とその顔を見せるな」
「……かしこまりました」
「他の処罰については、また後日詳しく決める。……ひとまず、これ以上傷つけることはないとマリアに誓おう」
王子の言葉に、フランシーヌの目からまたボロボロと涙が溢れる。
慕っている相手から二度と顔を見せるなと言われたことが悲しいのか、最後の慈悲の言葉に感謝しているのか、その涙の理由はマリアにはわからなかった。
エドワード様との婚約の話が完全になくなってしまった……。
これはきっと彼女にとって1番つらいことだよね。
フランシーヌにとって、十分すぎる罰は受けている。
体への負担は無くなったけれど、心の負担はさぞ大きいことだろう。
でも、そこも考え直してあげてとはさすがにマリアも言えなかった。
「エドワード様、ありがとう」
「……マリアの頼みじゃなかったら聞いてないぞ」
「うん。ありがとう」
エドワード王子はまだ納得のいかない顔でフンッと顔を横に背けた。
昔から不器用な王子の優しさに、マリアは心から感謝した。