心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……ところで、なんで今日は兄も一緒だったんだ? レオがいるのに、わざわざ一緒に来たのか?」
「あ、うん」
フランシーヌのことに必死で、今日はグレイが一緒だったことをすっかり忘れていた。
今頃ソワソワしながらマリアたちが地下牢から出てくるのを待っていることだろう。
急いで戻らなきゃ……と思ったマリアは、ふとあることに気づく。
あれ? そういえば、お兄様と気持ちが通じ合えたことをエドワード様に言ったほうがいいのかな?
以前、エドワード王子が婚約者を作らずにいたのはマリアが好きだったからだと言われたことを思い出す。
もう確実に王子とマリアが結婚する未来がないのであれば、それは早めに伝えないといけない。
ズキッ
王子からの求婚を断ると考えただけで、マリアの胸が痛んだ。
今までも何度も断ってきたけれど、恋心がわかるようになったマリアにはそれがどれだけ残酷なことなのかがやっと理解できたからだ。
ごめんなさい。エドワード様……。
「このあと、少し話ができる?」
「…………!」
マリアの悲しそうな問いかけに、王子は一瞬で真顔になったあと覚悟を決めたようにコクッと頷いた。