心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……理由はこの前と一緒か? それなら、俺は諦めないと伝えたはずだけど」
ムスッとした王子の返答に、マリアが「それだけじゃなくて……」とモゴモゴと言い返そうとしている。
〝この前の理由〟がなんなのかグレイにはわからないが、今断っている理由は間違いなく自分とのことが関係しているのだろうと察することができる。
グレイは一歩前に出て、2人の会話に入っていった。
「マリアは俺のものですから、他の誰とも婚約はさせません」
「!?」
あまりにもハッキリとした物言いすぎて、グレイ以外の全員の目と口がポカンと丸くなる。
真面目な話をしているというのに、なぜみんなそんな間抜けな顔をしているのかとグレイは不思議に思った。
「マリアは俺のもの……?」
「グ、グレイ……?」
ボソッと呟かれた王子とレオの言葉が、静かな部屋の中でかすかに聞こえた。
エドワード王子は今のは空耳か? とでも言いたそうな顔をしているし、レオは本物のグレイか? と疑うような目で見てくる。
マリアは、頬を赤く染めてグレイの顔をジーーッと見つめていた。
「俺のもの、とはどういう意味だ?」
「そのままの意味ですが。昨夜、マリアは俺のものになりましたので」
「なっ……!?」