心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
その言葉を聞いた瞬間、エドワード王子はマリアの肩を、レオはグレイの肩をガシッと掴んだ。
「マリア! 昨日、兄に何かされたのか!?」
「グレイ! マリアに何したの!?」
ほぼ同時に、2人の大声が部屋に響いた。
先にそれに答えたのはマリアだ。レオがものすごい勢いで前後にガクガク揺らすものだから、グレイは答えることができずにいた。
「あ……えっと、実は、ミ、ミアのキスを……」
「…………ミアのキス?」
恥ずかしげに話すマリアの返答を聞いて、王子とレオがはぁーーっと大きなため息をついた。
普段の王子であれば、誰かがマリアにミアのキスをしただけでも怒るところだが、今はそれ以上のことを想像していたせいかホッと安心してしまっている。
レオはグレイに「紛らわしい!」と文句を言い、グレイに「何がだよ!?」と怒鳴りつけられていた。
しかし、一安心したのも束の間。
すぐにハッとした王子とレオが再度グレイとマリアを交互に見る。
「いや……待て。ミアのキス?」
「え……グレイがしたの? マリアに?」
「ああ」