心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
戸惑った様子の2人にキッパリ言いきると、2人の視線がグレイに集中した。
レオが何か問いかけるのを躊躇した瞬間、エドワード王子が確認するようにグレイに尋ねる。
「兄であるヴィリアー伯爵が、なぜマリアにミアのキスを?」
質問しているというのに、まるで答えがわかっているような顔。
そして、できればその考えが外れていてほしいというような空気を感じつつ、グレイは王子に遠慮することなくキッパリと答えた。
「もう兄でいるのはやめました」
「兄でいるのはやめた? それはどういう……」
「俺は妹としてではなく、女としてマリアのことが好きだと気づいたので」
「!!」
恥ずかしげもなく堂々と言うグレイの姿を見て、王子とレオは呆気に取られている。
マリアが否定することなく照れた様子でうつむいているのを確認したあと、エドワード王子が立っている気力がなくなったかのように床にペタッと座り込んだ。
王子らしからぬ行為だが、この場には4人しかいないのだから構わないだろう。
「エドワード様……?」
マリアが気遣うように声をかけると、王子は頭を押さえながら大きなため息をついた。
「はあーー……っ。そっちも気づいちゃったのかよ……」
「ん?」
王子の呟きに、マリアが反応する。
グレイの発言に驚いてはいたけれど、どうやらそのことはすでに知っていたような口ぶりだ。
さすがにその王子の反応にはグレイも眉をくねらせた。