心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「まるですでにご存知だったかのような言い方ですね?」
「当たり前だろ! ヴィリアー伯爵もマリアも、どっちもわかりやすすぎるんだよ!」
八つ当たりのように怒鳴った王子の近くでは、レオがうんうんと深く頷いている。
気まずそうに顔を赤くしたマリアとは違い、グレイは納得のいかない顔で2人を凝視した。
わかりやすい? 俺が?
学園でも仕事で会う貴族にも、何を考えているのか表情が読めないと言われてきたグレイにとって、その言葉は衝撃であった。
知っていたならなぜもっと早く教えてくれなかったのかと、レオに軽い怒りが湧いてくる。
グレイはジロッとレオを睨みつけた。
「なんで早く言わなかったんだ?」
「え。なんで俺が怒られるの!?」
「お前は前から気づいてたんだろ?」
「俺だけじゃないよ! ガイルだってエミリーだって気づいてるよ!」
「!?」
グレイがさらなる衝撃の事実に驚いていると、エドワード王子がスッと立ち上がってグレイに近づいてきた。
「それで? マリアと結婚するのか?」
「マリアと結婚?」
「…………」
そんなこと考えてなかったと言わんばかりのグレイとマリアのポカンとした顔を見て、エドワード王子が心底軽蔑した目で2人を見据えた。