心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
103 そっちも気づいたのかよ……
結婚……?
その言葉を聞いて、グレイは一瞬背筋がゾクッとするのを感じた。
グレイにとって〝結婚〟とは愛し合う2人がするものというイメージよりも、地獄への入口のようなイメージが強かったからかもしれない。
グレイにとっての結婚・家族とは、些細なことで崩壊してしまうくらい脆くて薄いものだから。
そのため、マリアと気持ちが通じ合ったあとも、グレイの頭の中には〝結婚する〟という考えは微塵も浮かばなかった。
しかし、普通であればこういう場合は結婚するものだということは理解できる。
俺とマリアが結婚?
この俺が……ちゃんとした家庭を作れるのか?
自分はあんな父や母とは違う。
グレイはそう声を大にして言うことができずにいた。
自分の感情が欠落していることもわかっている。
父のように冷徹で、他人よりも自分を優先するような思いやりのない男。
そんな男がマリアを幸せにできるのだろうか。
自分の父と同じような道を歩み、マリアを母と同じような目に遭わせてしまうのではないかと考えると、グレイははじめて〝結婚〟を恐ろしいものだと思った。
「結婚は……」
そうポツリと呟いたとき、輝いた瞳で見つめてくるマリアが目に入った。
どんな答えを期待しているのかがわかる分、グレイはその続きが言えなくなってしまう。