心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「…………」
「グレイ!」
言葉の止まったグレイの肩をグイッと引いて、レオが顔を近づけてくる。
「グレイは両親とは違う! そりゃあ自分勝手で冷徹なところもあるけど、マリアに対しては違うだろ!? グレイはいつだってマリアにだけは優しかった! マリアを1番に優先してた! ちゃんとマリアのことを考えてあげてたよ」
「…………」
「だから心配しなくて大丈夫!」
何も言っていないのに、なぜかグレイの考えている不安について必死にフォローしてくるレオ。
自分のことをわかりやすいと言っていたのは本当だったんだな、と冷静に思う一方で、レオの言葉が素直に自分の心に響いていることにグレイは驚いた。
俺はちゃんとマリアのことを考えてやれてた……?
家族も自分自身のこともどうでも良く、暗くつまらない世界の中で唯一眩しく輝いて見えたマリア。
グレイの心を動かし、その世界を少しずつ明るく照らしてくれた。
マリアがいれば、きっとどんな世界も明るく優しいものになるのだろう。
……そうか。
俺は子どもの頃からずっと、そんな光を求めていたのか。
グレイは自然と口角が緩み、にっこりと微笑んでいた。
その笑顔を見て、3人が硬直したかのようにグレイから目を離せなくなる。
マリアは頬を赤く染めて口元を手で覆い、エドワード王子は小さな声で「笑った……」と呟き、レオは「昔の……っ、グレイだ……っ」と言って泣き出した。
そんな3人の反応を気にする素振りもなく、グレイは王子に向かってキッパリと答えた。