心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「はい。マリアと結婚したいと思っております」
「!」
「お兄様……っ」
自分を呼ぶ声が聞こえたグレイは、マリアを振り返りニコッと優しく微笑む。
その魅力的すぎる笑顔を直視したマリアは、力が抜けてよろけそうになったところをレオに支えられていた。
そんなマリアに呆れた視線を向けていた王子が、ハアッとわざとらしいくらいに大きく息を吐き出す。
「……わかった。聖女マリアの結婚について、俺から先に父に伝えておこう」
「……反対されないのですか?」
「あのマリアを見て反対できるか? それに、どうせ俺が反対したところで、2人は言うこと聞かないだろ?」
「はい」
「うん」
同時に2人から即答された王子は、「コイツら……っ!」と言いながらギリッと歯を食いしばった。
強く握った拳もプルプルと震えていて、レオが同情の目で見ていることには気づいていない。
「……まあ、いい。お互いがそのことに気づいたら、どんなに俺ががんばったところでひっくり返せないことはわかっていたし。……だから自覚する前に婚約しておきたかったのに」
エドワード王子の最後の呟きは、小さすぎてグレイやマリアの耳には届かなかった。
グレイが聞き直すべきか迷っていたとき、マリアが王子の前に立ってペコッとお辞儀をした。