心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「なぜそれを知っている?」
グレイが眉を顰めて尋ねると、ガイルがさも当然のことのようにキッパリと答える。
「今朝のマリア様のご様子で、昨夜お二人がお互いの気持ちを通じ合ったのだと悟りました」
「……それで?」
「本日、お二人で王宮に向かわれたので、エドワード殿下とお話をした上で結婚するという流れになると予想しました」
「……それで、この準備をしたと? ただの予想の段階で?」
「はい。ですが、予想は的中したと確信しております。間違えておりますか?」
「…………」
相変わらず、先の先まで読んでいやがるな、このジジイ……!
グレイが悔しそうに小さく舌打ちをすると同時に、レオが「さすがガイル!」と大きな声で褒め称えていた。
マリアはすでにエミリーをはじめとするメイドたちに囲まれている。
キャアキャアと甲高い声で盛り上がるメイドたちの中心で、真っ赤な顔で微笑むマリアがかすかに見えた。
「マリア様、おめでとうございます!」
「本当に嬉しくて、飾りつけをしながら何度も涙ぐんでしまいました」
「グレイ様とマリア様が……!」