心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 自分を見透かされたようでどこか気に入らないが、マリアや使用人たちが心から喜んでいる姿を見るのは悪い気はしない。
 グレイは小言を言おうとしたのを止め、ガイルに問いかけた。


「だが、俺とマリアは結婚できるのか? マリアを俺の妹としてヴィリアー伯爵家に登録してしまったが……」

「問題ありません。マリア様はグレイ様の妹として登録しておりませんので」

「…………」


 ガイルの不可解な言葉に、グレイは一瞬混乱した。
 マリアを別邸から連れ出してすぐ、グレイの妹として登録するようにガイルに手続きを任せたのを覚えている。

 

 ガイルは手続きは無事完了したと言っていたはずだ。
 なのに、登録していないとはどういうことだ?



 グレイの疑問に応えるように、ガイルがしれっとした調子で淡々と説明を始めた。


「マリア様はお母上であるエマ様の娘として登録しております。ヴィリアー伯爵家の養子としては登録しておりません」

「なぜだ? 俺は妹として登録しろと……」

「はい。ですが、こうして結婚したいとおっしゃられたときに妹の立場では厳しいかと思いまして」

「……10年前の時点で、こうなることを予想していたと?」

「はい」


 キッパリと応えるガイルを、グレイだけでなく他の使用人やレオまでも少し引いたような顔で見つめる。
 さすがガイル様……と思っている使用人の声が、グレイには聞こえた気がした。

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