心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

最終話 出会えてよかった


 グレイがどこか気恥ずかしそうに階段を上がっていくのを、マリアはほっこりとした気持ちで見送った。
 その後ろ姿から、グレイが喜んでいるような気がしたからだ。

 グレイの姿が見えなくなったあと、マリアはまたメイドたちに囲まれた。


「マリア様! 本当に良かったですね。おめでとうございます」
「マリア様とグレイ様が結婚されるなんて、私たちも本当に嬉しいです!」
「こんなにお似合いの夫婦はなかなかおりません!」


 エミリーだけでなく、みんな嬉しそうに目に涙を溜めている。
 まるでみんながマリアの気持ちに気づいていたかのような反応をしているので、マリアは恥ずかしくて「うん。ありがとう」としか答えられなかった。

 実は、まだ結婚について実感がないというのもあるかもしれない。



 私、ほんとにお兄様と結婚するの……?



『結婚したらずっと一緒に暮らしていける』
 幼い頃に教えてもらったその言葉を思い出し、マリアはニコッと静かに微笑む。

 その美しい笑みでメイドたちの胸が射抜かれていることに、マリアは気づいていない。


(マリア様! なんてお美しいの!)
(幸せなのが溢れ出ているわ! ああ。お屋敷の中がさらに綺麗になっていくわ)


 悶えているメイドたちの中から、マリアの笑顔に慣れているエミリーが一歩マリアに近づいてきた。
 

「マリア様。グレイ様のところへ行きますか?」

「えっ。あ……行っていいのかな?」


 不安そうにレオとガイルに視線を向けると、2人は自信満々に頷いていた。
 レオに至っては、親指を立てて『大丈夫』だと伝えてくれている。



 この2人がいいって言ってるなら、大丈夫だよね?

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