心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「あの、お兄様。本当に私達結婚するんだよね?」

「…………」

「お、お兄様?」


 なぜかグレイが自分を見つめたまま何も答えないので、マリアは一気に不安に襲われた。



 なっ、何!? やっぱりやめるとか!?



「あの……」

「それ」

「え?」

「その『お兄様』ってやつ。もうおかしいだろ」


 予想外なグレイの回答に、マリアは目をパチッと見開いた。
 少し間を置いてから、やっとグレイの言っていることが頭に入ってくる。



『お兄様』がおかしい?
 あ。私は妹じゃなかったから?


 
「そうだよね。私、妹として登録されてなかったみたいだし」

「そうじゃなくて。結婚する相手のことを『お兄様』って呼ぶのはおかしいだろって話」

「あっ……」



 そっか。たしかに……!



 自然とさっきの答えになる『結婚する相手』という言葉に安心しているマリアとは違い、グレイはどこか不機嫌そうにムスッとした顔でブツブツと話を続けた。


「そもそも、レオやあの生意気王子のことは名前で呼んでるのになんで俺だけずっと『お兄様』だったんだ? いや。まぁ、それは俺が言わせたことだが……」

「…………」


 グレイが自問自答しながら子どものように拗ねている。
 こんな姿のグレイを見るのは初めてなので、マリアはポカンとしながら問いかけた。

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