心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリア。……俺と本当の家族になろう。こんな俺と結婚しても、マリアが幸せになれるかはわからないし自信もない。けど……マリアにはこれからもずっと隣にいてほしい」
「…………」
「マリアがいなかったら、たぶん俺はまともな人間として生きていけない気がする」
フッと自分を嘲笑うかのように呟いたグレイを見て、マリアは自然とその頬に触れていた。
涙は出ていないけど、マリアにはグレイが泣いているように見えていた。
「私は今までに何度もお兄様から幸せをもらったよ? 初めて会った時から、何度も何度も。お話してくれるだけで嬉しかったのに、あの檻から出してくれて、妹のように大事にしてくれて、好きって言ってくれて……」
マリアが目を見て話している間、グレイもずっとマリアから目を離さなかった。
なぜか泣きたくなる気持ちを抑えて、マリアはニコッと笑顔を作る。
「私にとって、お兄様はずっと光だったの」
「!」
「真っ暗で寂しい世界を照らしてくれた、唯一の光。私にとって、お兄様は誰よりも特別で大切で大好きな人なんだよ。だから、そんな心配しなくて大丈夫。お兄様と一緒にいるだけで、私は幸せだから」
「マリア……」
グレイは、一瞬驚いた様子で目を見開いたあとに突然肩を震わせて笑い出した。
何事かと思い、マリアは頬に触れていた手を離す。
「な、何……?」
「いや。……俺達は本当に似たもの同士なんだなって思っただけだ」
「?」