心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

12 突然やってきた少年との出会い


 その日はマリアの7歳の誕生日であった。
 もちろん、そんなことはマリア本人も知らない。

 いつものように冷たい檻の中で、マリアは眼帯越しにうっすらと見える丸い月を眺めていた。

 その時、部屋の外から微かに物音が聞こえてきた。
 人が歩いている音。たくさんの扉を開け閉めしている音。

 ジュード卿とエマがいなくなってから、この時間に物音がすることなどなかった。
 イザベラもキーズも、夜になると帰ってしまうからである。



 だれ……?



 しばらくその物音を聞いていると、だんだんとこの部屋に近づいてきているのがわかった。
 
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