心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「お前は誰にここに連れて来られたのだ?」
──連れて来られた? マリアはずっとここにいたよ。
「いつからここにいる? ここで何をしている?」
──赤ちゃんの時からいるよ。月を見てたよ。
「この檻から出ることはあるのか?」
この質問になら声を出さずに答えられると思ったマリアは、コクリと頷いた。
「ここには毎日人が来るのか?」
「それは女か?」
「それはイザベラという名前か?」
マリアはコクリと頷く。
キーズが「イザベラ様」と呼んでいたので、マリアは自分をいじめてくる女性がイザベラという名前だと知っていた。