心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「他には誰が来るんだ?」


 ──キーズって名前の男の人と、怪我をした人や病気の人が来るよ。


 この質問にはマリアは答えられない。
 少年はマリアが何も言わなくても怒ったりしない。それがマリアには不思議だった。

 
「イザベラ以外の人間も来るのか?」


 マリアはコクリと頷いた。
 会話という会話はしておらず、マリアは黙っているか頷くだけであったが、人とのやりとりがとても楽しい。

 少年の声には決して優しさがあるわけではなかったが、狂ったように罵倒してはこないその落ち着いた声は、マリアを安心させていた。
< 89 / 765 >

この作品をシェア

pagetop