心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「他には誰が来るんだ?」
──キーズって名前の男の人と、怪我をした人や病気の人が来るよ。
この質問にはマリアは答えられない。
少年はマリアが何も言わなくても怒ったりしない。それがマリアには不思議だった。
「イザベラ以外の人間も来るのか?」
マリアはコクリと頷いた。
会話という会話はしておらず、マリアは黙っているか頷くだけであったが、人とのやりとりがとても楽しい。
少年の声には決して優しさがあるわけではなかったが、狂ったように罵倒してはこないその落ち着いた声は、マリアを安心させていた。