心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
しばらく少年とのやりとりが続いたところで、会話がピタリと止まった。
少年が周りをキョロキョロしているのが、眼帯越しに見える。
「いいか。俺がここに来たことは誰にも言うな」
マリアがコクリと頷くと、少年が立ち上がった。扉のほうに歩き出すのが見える。
行かないで。
マリアは初めてそう思った。
危うく声に出してしまいそうになったのをなんとかこらえて、マリアは部屋から出ていく少年を見送った。