心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 少年が現れた日から数日……マリアはその間もたくさんの貴族を治癒していた。
 ジュード卿の頃よりもあきらかに忙しくなっている。

 貴族の裏事情などよくわかっていないイザベラは、顧客を厳選することなく屋敷に呼んで聖女の治癒を受けさせていた。


(王宮に聖女の存在が知られる日まで、そう遠くないかもしれない……)


 そんな噂話を立てられていることすら、イザベラは知らなかった。


 その日、数人の貴族の治癒を行ったマリアは、疲れて早めの眠りについていた。
 誰もいないはずの静かな屋敷。
 冷たく硬い檻の中も、1年も過ごせばさすがに慣れる。

 いつものように体を丸くして眠っていると、いきなり声が聞こえた。
< 91 / 765 >

この作品をシェア

pagetop