心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

13 俺のことはお兄様と呼べ


 マリアと少年は、薄暗い中しばらく無言のまま見つめ合う。
 すると、少年が口を開いた。


「怪我をしたら治せるのか?」


 マリアがコクリと頷くと、少年は服の中に隠し持っていたナイフを取り出した。
 月の明かりに照らされて、小型ナイフがきらりと光る。



 マリアのことを切るのかな?



 今までに何度もイザベラにナイフを向けられた経験があるマリアは、大人しく少年が動き出すのを待つ。

 すると、少年はマリアを見向きもせずに自分の腕を見つめ、そのナイフで切りつけた。


「!」


 少年の腕からは血がポタポタと垂れているが、少年の顔は痛みをまるで感じていないかのように冷めた表情をしている。



 痛くないのかな?
 マリアは、切られたり血が出ると痛いんだけどなぁ。
< 95 / 765 >

この作品をシェア

pagetop