心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 少年がニヤリと笑う。
 初めて見た少年の笑顔を見て、マリアは自分の心が温かくなったのを感じた。

 じーーっと自分を見つめるマリアに気づいた少年は、今度は少しだけ頬を赤く染める。
 気まずそうに視線を逸らしながら、また質問をした。


「床の血を消したのもお前か?」


 マリアがコクリと頷くと、もう一つ質問をされる。


「お前は、イザベラがここに来る前……ここに住んでいた女の娘か?」


 マリアの頭に、自分の母……エマの姿が浮かぶ。
 マリアはコクリと頷いた。


「やはりそうか」


 少年は、マリアの答えを聞くなりなぜか暗い顔をした。
 
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