おいで、Kitty cat
どれだけ身体が大きくても、真っ赤になってちょっと不貞腐れてる永遠くんは、可愛いでしかなかった。
「喋り疲れた……」
にまにましてるんだろう私をチラッと横目で見て、出た文句が文字じゃなく声だったことも。
何だか妙に嬉しくなってしまう自分を見て見ぬふりして、できなくなって、消そうとしても上手くいかない。
「人の告白、ニヤニヤしてひどい……」
視線から逃げるようにテーブルに突っ伏す彼の頬は、まだ赤いまま。
「だって……」
告白にというより、照れまくって必死に否定する永遠くんが可愛かっただけなんだけど。
本気で聞いてなかったみたいに聞こえて、ちょっと焦る。
『可愛い? 俺のこと、迷い犬かなんかだと思ってるでしょ』
不満を伝えたいけど、言おうか言うまいか迷った挙げ句に入力して、少し乱暴にスマホをテーブルで滑らせた。
(バレてる……でも、どっちかというとやっぱり猫かなぁ……)
「そ、そんなことないよ。可愛いとは思ったけど……」
『嘘だ。引かれるの覚悟だったし、嫌われるよりずっといいけど。でも、一回ちゃんと言っとく。俺ね』
文字を打ってはぷいって顔を背けて、スマホの画面見せてくるの見て、可愛いと思うなと言われても正直無理だ。
おまけにやっぱり、これだけ年が離れてると、どうしたって可愛いしか出てこなくなる――……。
『いっそ仔犬くらいに思ってもらってたら、もっとくっつけるかなって。警戒心薄いの寧ろラッキーじゃね、って。そんな狡いこと思いつく、ただの人間。ちなみに、知ってた? 』
「……可愛い永遠くん。性別、オスだよ」
どこまで、文字を読めただろう。
どこまで、永遠くんはそれを私に読ませたかったんだろう。
テーブルに置かれたスマホを真上から覗き込んでいた私の目には、いつの間にか永遠くんの大きな手しか見えなくなってた。
スマホも、無意識に身体を支えてた自分の手も視界にはない。
「……わ、かってる……」
「……ごめん」
スマホは、払いのけるようにちょっと遠くへ永遠くんの左手で放られたからで。
私の手は、彼の右手の下に隠れているから。
「約束、ちょっとだけ破らせて。しかも、たぶん、これからちょっとずつ、そういうの増える……」
くんっと引かれるまま、仰け反るように距離が縮んだ。
「わん」
至極真顔で鳴き真似をされて、こんなにドキドキするのはバレてないんだろうな。
「……にゃー……? 」
フリーズして動けないのは、鳴き方が納得できなかったわけじゃないのに、律儀に訂正されて少し笑えた。
「……好き。俺の世界にいてくれて、ありがと」
至近距離に、永遠くんの顔があるから。
反応できない理由がそれだと知って、それはもう迷った仔犬や仔猫を保護した感覚とは遠く離れてるってこと。