おいで、Kitty cat
――シャワー浴びて、落ち着いたら来て。
どちらかの部屋に雪崩込まなかったのは、私たちらしいと思う。
でも、それはひとえに永遠くんの優しさから成っていることも分かってた。
この酷い有様を気遣ってくれたのもあるし、帰り道、まだ何も伝えられていない私に、時間を与えてくれたんだと思う。
『アイス、一緒に食べよ』
そんな、部屋に誘うよりは随分楽な言葉を飲み込んで、私に選ばせてくれたのも。
(でも、決めたから)
いくら緊張しても、何度口を開いても声にならなかったとしても。
それでも、決めたことには変わりない。
――私、永遠くんが好きだ。
会って間もないうちに、姉弟だとしても珍しいかもしれない年齢差の男の子に恋をしている。
その表現はちっとも間違いじゃないのに、「男の子じゃなくて、男性だ」って、今更首を振りたくなるほどに。
髪を乾かして、何とかそれなりに見えるように支度を済ませると、永遠くんの部屋のドアをノックした。
チャイムを鳴らせばいいだけなのに、恐る恐るドアを叩いた私は臆病だ。
でも、不思議とそんな自分も嫌じゃなかった。
今から好きな人に告白するのだと思えば、きっとそれも自然なことなのだろうと。
初めて知る感情が、一応は存在していた知識とすんなり重なる感じは悪くない。
「……っ」
ずっと待っててくれたんだろう。
聞き逃しても仕方ない音だったのに、すぐにドアが開いた。
「……ど、うぞ」
「お邪魔します」
永遠くんの髪はまだ少し濡れていて、申し訳なくて触れたくなるのを我慢する。
だって、まだ何も言葉にできていない。
今簡単に触れたと思われたら、仔猫扱いだけだと言われても否定できなくなりそうで。
「……っ、か、風邪引いてない? ほんと、ごめ……っ」
部屋に通してくれたところで、緊張に耐えきれなくなったんだろう。
広い背中がくるりと勢いをつけて反転して、後ろを歩いていた私の額が永遠くんに衝突した。
「ごめ……」
「謝らないで。永遠くん、何も悪くないよ」
慌てて距離を取ったのは私の為なのに、切なすぎて苦しい。
当たったのは、おでこだけ。
それなのに、こんなにドキドキする。
「私こそ、ごめん。自分の気持ち、認めた後が怖くて、勇気がでなくて。傷つけてごめんなさい」
服越しの背中が、こんなに温かいのは。
一瞬ぶつかっただけで、キュンとして嬉しかった直後、離れて寂しくなるのは。
「……仕方ないよ。彼氏でもないやつと手繋いでるの他人に見られたら、普通に気まずいに決まってるのに俺が子ども……」
「好きな人だから」
いくら否定したって、あれもこれも、全部永遠くんが好きだって証明してる。
「格好いい年下の好きな人の側にいる自分が、見合ってないみたいで……自分が恥ずかしかったの」
それでも、やっぱりどうしても近づきたいのを抑えきれなくなる今だって、そう。
「でも、好き。だから……お願い」
――私と、いてくれませんか。