おいで、Kitty cat
(……私、心臓動いてるんだ)
ドキドキと鳴って恥ずかしいよりも、感心してしまうのは変すぎるよね。
でも、それほど新鮮で、何だか嬉しい。
馬鹿みたいだとは思うけれど、どこか本気で自分がサイボーグでもおかしくないと納得してるところがあったから。
だから、さっきみたいにしていたい。
恋をしてるんだと、私も恋するとこうなるんだと。
永遠くんにくっついて、感じていたい。
「……っ、な……」
でも、正面から抱きつく勇気はまだなかった。
雨の中、人前で抱き合っといて、というのは置いといて、少し冷静になった今の方が緊張してる。
永遠くんも同じなのかも。
話すのが上手くないからというよりは、本当に何て言っていいのか分からないみた――……。
「……な、なんで!? 」
――い??
(……なんで?? )
「……い、いや。違う。今のなし。す……好きでいてくれた方がいいけど。取り消されても困るし、絶対ダメだけど……!! 」
「と、取り消さないよ……」
真っ赤になって首を振る永遠くんを見てると、鼓動の間隔が短いドキドキが、もう少しゆったり、でももっと深く刻まれるような、トク……という心音に変わる。
怒られるかもしれないけど、やっぱり可愛いと思う。
(……ああ、やっぱり好きだな)
それでも、同時にそう確信するの。
「……けど、なんで、そんな落ち着いてるの……。告白された俺の方がテンパってて、ずるい……」
そっと両肩を包まれて、気は確かか確認されてるみたいでムッとする反面、上手く伝えてあげられないことが悲しい。
「……すごく、心臓鳴ってるなって思ってたんだけどな」
「……ほんとに? 」
もしかして、私はやっぱり本当にサイボーグで、こんな局面でも体温すら感じてもらえないのかも。
「……うん」
でも、ほら。
心臓、ちゃんと動いてるよ。
誰だって、普段意識なんてしないとは思うけど。
永遠くんに会って、好きだって知って――ううん、気づかないふりしてただけで、本当はもっとずっと前から。
永遠くんのことを考えると、一体いつぶりか分からないほどはっきりと、自分の鼓動が聴こえてくるの。
伝わりにくいかもしれないけど、ね、ほら。
「……っ」
感覚の鈍い私よりも、きっと、永遠くんの優しい掌の方がそれを感じ取れる。
「……だ、から……っ、な、なんでそんな……ことでき……」
「え? 」
ピクンと震えたのをごまかす為に、わざと大きく聞き返した。
だって、思ったよりも永遠くんの手が大きく、指が長くて――いきなり勝手に触れさせられて驚いたのか、ピクリとした拍子で鎖骨を掠めて、心臓が再びドクンと強烈に鳴ったから。
そうなると、もう止まらなかった。
自分で胸に手を引き寄せたのに、肌に永遠くんが触れたことも。
繋いで知っていたはずの手の大きさにびっくりして、指が鎖骨まで届いていることが、なぜか急激に恥ずかしくなる。
「そんなにさらっと、胸触ら……できるの。猫、抱っこしてる気分にでもなってるんじゃ……」
触れられたのは「心臓」だったのが、もうそれだけじゃなくなってくる。
それはもう、仔猫だなんて言えないのに。
「感情、上手く出せなくてごめん。仔猫の永遠くんも好きだし、可愛いけど……男の人の永遠くんには、こんなにドキドキしてるよ」
顔、自分では熱いくらいだけど、永遠くんには冷めて見えるんだろうか。
触れ合った場所から伝わるのは、機械みたいにひんやりした感触だけなのかな。
そう思うと苦しくて、どうにか何とか伝えたくて。
「永遠くんが好き。今の自分を見て、私はそうとしか思えないの」
なのに、どうしてそんな同じ言葉しか出てきてくれないんだろう。