Sherry~君の傍にいつまでも
僕の名前は【オーブリー】
僕の名前の由来は【エルフの支配者】という、何とも神話に出てきそうな名前だが、正直女の子みたいな名前で少し困惑する。
この世に生まれ、この名を与えられたのだから、この名で人生を全うするしかない。
しかし神様は残酷で。
僕は物心がついた頃から、母や父と離れて別の家庭で過ごす事が決まっていた。後から聞いた話しでは、これが僕の育成プログラムだったらしい。
母が恋しくて何度も涙を流したが、僕と同じくらいのホストファミリーの女の子が「大丈夫だよ」と、おぼつかない口調で僕の背中を擦ってくれた。「俺と遊ぼうぜ!」と、女の子の兄がコッソリと遊んでくれたのは良い思い出。本当は覚えなきゃいけないことが沢山あったのに。
それから少しずつ大人になり、勉強やマナーの指導を受けていく。いわゆるエリート教育だ。
僕の他にも同じく優秀な境遇の子が、産まれた時から将来を有望され、期待されて育成される。
トイレや睡眠、食事の時間まで全てスケジュール通りに動かなければならない。
母も同じ職種だったので、僕がこの職種につくことは誇りだろう。
嫌だと思った事は何度もある。少しでもミスをしたら「お前のミス一つで人の命に関わるんだぞ!」と、身体が震える程激しく怒られるからだ。
泣いても、落ち込んでも……
僕には甘える相手なんて居ない。周りの同僚達もそれは同じで、優秀と呼ばれた僕らでも、本当は沢山甘えて抱き締められたかった。
そんな感情は心の底にソッと閉じ込め、今日もまた、
世界の医療従事者のトップクラスの一員になる為に、過酷のスケジュールを組んで勉強していく。
< 1 / 13 >