Sherry~君の傍にいつまでも
何度も季節が巡り、四季折々の風情を楽しんで数年。
春の匂いに包まれて、花冠を作るローズが、僕の頭に乗せてケラケラと笑う。まるで君は花びらから産まれたプリンセスみたい。
夏の花火大会は、家の窓から二人寄り添いながら音だけを楽しんだ。
音だけでも心揺さぶられる、そんな夏の空の匂いを感じながら。
秋のお祭りではローズがワインを飲んで酔っぱらい、またしても僕との間に不穏が流れた。どうやら僕とローズは秋との相性が悪いらしい。
冬では誰もいない雪一面の野原を僕が珍しくはしゃいでしまい、ローズが僕に当たらない的外れな雪玉を投げては、二人で笑いが止まらなかった。
時間が止まればと何度も願い、白銀の世界で結晶に囲まれて僕ら二人。抱きしめることもキスをするのも、天から舞い降りる雪の天使達だけがその姿に微笑むんだ。
何処にいても、何をしても、君と過ごす毎日が楽しくて愛しいのに。
世界的に見ても僕が持っている知識や資格は少数な筈なのに、ローズの病気を治すことが出来ない事がもどかしい。
神様……
何故僕にはその力が無いのでしょうか。
ローズ……
どんどん君の全ての世界が暗闇に近づいているのを知っている。
この姿を見ても、神様は心を痛めないのですか?
キャンバスを抱きしめ、心の底からの深い悲しみで、泣き叫ぶ彼女の姿を見てもその手は差し伸べてくれないのですか?
僕には、彼女の傍に寄り添い、流れる涙を拭いて頬にキスをするしか取り柄がないのですか?
どんな彼女でも永遠に愛していると誓えるのに、暗闇の彼女はそれを受け入れられないのは、僕の愛が足りないのかと考えてしまう。
僕の声が
彼女の心に届いていないのか?
僕はここにいるんだよローズ。
ねぇローズ
見えないその眼でも、両手を広げて僕を抱き締めてくれよ。
僕が見えないのは君の愛だよ。
柔く染み渡り、流れる運河のように君の絶望と僕の不安を
見えない地平線まで運んでくれよ。
何故不安でこの押し潰されそうな感情だけが、人々を弱くさせてしまうんだ。
僕の存在は、ちっぽけだ。
愛してる。
それだけが確かなんだ。