Sherry~君の傍にいつまでも

 着々と出された課題をこなしていく日々に、ある程度の年齢を迎えると直属の先生がマンツーマンで、僕らの教育を朝から夜まで容赦なく監視をされながら過ごすんだ。

 当たりの先生だったら勿論楽しいんだけど、同僚のアランが「最悪だ。出された課題を少しでも間違えると、僕の顔の近くまで寄って唾を飛ばしながら怒るんだ」と、嘆いていた。「御愁傷様」彼に対するフォローはこの程度で充分だ。
 僕の先生は可もなく不可もなくといった所だろうか。
 僕らのような存在に慣れているのか、叱り方や褒め方はまるで薄っぺらな教科書が目の前にいるような典型的なものだった。

 彼らの目的は、優秀な僕らを世に出すという実績と名誉が欲しいだけだろう。
 正直君たちの大きくて長い鼻をへし折って意気沮喪にしてやりたい所だけど、僕にだってプライドがある。

 早くこんな所から抜け出して広い広いこの世界、僕を必要としている人達の為に全力で励みたいのだ。

 当たり前のように僕は試験に合格したが、その合格率はどんなに優秀を育て上げても、3割と聞いていた。前に嘆いていたアランの姿は何処にもいなく彼が選ばれし者だったかそうではなかったかは、今となっては知らないこと。

 子供だった記憶がだんだんと薄れ、気付けば誇り高き医療従事者のエリートとして取り組む日々。
 街や店を僕と医療機関に勤めている同僚と歩けば、女性達が僕の姿を見て、ため息が出るほどうっとりしている。
 男共は僕の姿を見た途端、ウィンク一つ、リスペクトとイケてるのサインを送ってくる。
 そりゃそうだ。
 僕には世界最高の医療の白い仕事着を身に付けているのだから。知っている者は喉から手が出るほどこの地位が欲しいものだろう。

 どんなに周りが僕を見て騒いでも、僕の事を必要としても残念ながら予約済み。

 この仕事に就いてから……そうきっと運命なんだ。
 まるで空から天使が舞い降りたんじゃないかと錯覚するくらい、美しい女性と出会ってしまった。

 そう、それはまるで美の象徴、あのヴィーナスが僕の目の前に現れ僕は一目で恋に落ちてしまったよ。
 あの時の出会いは今でも鮮明に覚えている。






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