Sherry~君の傍にいつまでも

 それから僕と彼女のお試しの同居生活を始めてみた。僕が彼女の目になれるのか、彼女の障害物や様々な困難を助けてあげられるのか、見極める為の生活だ。
 100%視力を失っていない彼女でも、僕が教えないとよく身体をぶつけていたし、段差や階段も、僕の誘導でスムーズに出来るのかどうか、二人で色々挑戦もしてみた。

 バスや電車にも乗ってみた。
 周りの人間達は、容姿も優れている僕の姿を見てニコっと微笑んでくれるのは日常茶飯事だが、白杖を持って歩いているローズの姿には同情や嫌悪感の眼差しで見ていたのが、僕の心に深く刻んだ悲しい現状だったのを覚えている。

 つくづく五体満足で過ごせる事がそんなに自慢なのかと問い詰めてやりたい。
 五体満足なのに彼女より醜く、彼女より芸術性が無いのは何故なんだい?と僕は叫んでやりたかった。

「オーブリー良いのよ。どうせ私の姿を好奇心の目で見ているのでしょ?慣れているわ。いちいち気にしていたらキリが無い。そんなことより、貴方とこれからも二人で住めたら私幸せなの。このまま私と一緒にいてくれる?」

 彼女はとても強い。
 僕なんかより、とっても強い。

 彼女の生活ルーティンを覚えていき、彼女の行動範囲を僕の力で広げ、僕らはこのまま一緒に住む覚悟を決めた。

「愛しているわオーブリー。いつまでも一緒よ」

 僕も愛しているよ。君の全てを僕が守ってみせるから。

 僕達はよくスキンシップのキスを何度もしていたが、本格的に一緒に住むと決めた霧が晴れた青空の下、天を司る神と母なる大地に誓いを立てて、パートナーの証としてのキスをした。


「ローズ愛している」

 油彩画の匂いと温かい毛布にくるまれながら、彼女の寝顔を何度も見て夜を過ごすことも堪らなく幸せなのだが、彼女も

「今までは夜のベッドでたまに孤独に襲われる時があったけど、貴方の寝息が聞こえてくると、あぁ私一人じゃないのねって、安心出来るようになったわ」と、僕と同じ様な気持ちなんだと話してくれて、僕達は一心同体なんだと嬉しく感じた。


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