運命の人
 「あの…なにか?」

 さっきからずっと見られている。
 さすがに視線に耐えきれなくなって聞くことにしたけど。

 「何ってことはないのですが」

 曖昧な答えが返ってきた。

 「怪しい者ではないんですよね?」

 怖くて確認するように聞くと、如月さんは笑った。

 「怪しい者ではないです。でも」

 如月さんは私の目を真っ直ぐに見て言う。

 「もう少し一緒にいたいと言ったら困りますか?」

 「困ります!」

 怪しい者ではないけど私とまだ一緒にいたいなんて意味がわからない。

 「もしかして、本当の本当の本当は本気で具合が悪いとかですか?」

 「どうして?」

 「だって」

 乗り過ごしてしまうくらい疲れているようだったし、泣いてもいた。
 そして一人でいたくないとなれば思い当たるのは風邪の時の寂しさくらいしかないから。

 「私も風邪ひいたり具合悪くなると一人でいるのが心細くて、寂しくて、涙が出る時があるんです」

 「あぁ。それはわかる気がしますね。でも今日は本当に違いますよ。ほら」

 如月さんは私の手を取り、そのまま私に顔を近付けると自身の額に私の手を当てさせた。
< 10 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop