運命の人
「熱はないでしょう?」
「熱は」
ないかもしれないけど、今の状況を理解出来ない私は熱どころじゃない。
「樋口さん?」
至近距離にいる如月さんに上目遣いに問い掛けられて、鼓動が加速する。
あまりにドキドキして、手に汗もかいてきた。
「こんな原始的な測り方!」
無性に恥ずかしくて如月さんの額から勢いよく手を離す。
「原始的過ぎて何とも言えませんぞ!」
動揺して変な言い方になってしまった。
車内が暗くてよかった。
「ハハ。それはその通りですね」
如月さんは楽しそうに笑うけど、こちらは恥ずかしくて頬が熱い。
如月さんに背を向けてパタパタと手で仰いで熱を冷ます。