運命の人
「そんなに可愛いのか?」
興味津々の二朗に「ものすごく可愛い」と短く答えると二朗は珍しいものでも見るような目つきで俺を見た。
「本当に玲か?別人じゃないのか?今まで誰かを『可愛い』なんて言うの、聞いたことないぞ?な?」
二朗は紗香に話を振った。
「たしかに。でも今度の子は違うのよ。ねぇ、玲。その子、初めて会ったのにまるで昔から知っているような感覚にならなかった?」
紗香の質問に少し考えてから「そういえば」と答える。
「どこかで会ったことのあるような気がした」
でももちろん会ってはいない。
あれだけ可愛い子に会っていたなら忘れるはずがないのだから。
ただ、彼女から香るほのかに甘い匂いはどこかなつかしくて、過去に会っているのではないかという気がしたんだった。
「ちなみに相手の考えていることってわかったりした?」
「それは年の功ってやつだろ」
俺と彼女は6歳離れている。
それに彼女は表情豊かで感情が顔に出やすいタイプだったから大体、なにを考えているのか分かった。
もちろん、怪しいと思われていたことも。
「フッ」
彼女が狼狽える可愛い姿を思い出して笑ってしまう。
「うわ。玲が笑ってる」
二朗に言われて、緩んだ口元を隠すようにビールを飲んだ。
「紗香!玲が彼女を思い出して笑ってるぞ?!今まで彼女のこと聞いても仏頂面しかしなかった玲が笑ってるんだけど?!信じられるか?!」
俺のあまりの変化に困惑気味の二朗は紗香に同意を求めるが、紗香はそれを無視して真面目な顔で俺に言う。