運命の人


 「うーん」

 何度見ても唸ってしまう。

 「大丈夫か?」

 聞き覚えのある声に顔を上げると同期入社の佐々木祐(ささきゆう)が目の前の席に腰掛けた。

 「しょうが焼き定食、美味しそう」

 お盆の上の料理を見ると「食べるか?」と言われたけど、それはさすがに断った。

 「それよりどうかしたか?すげー難しそうな顔して。悩み事なら同期のよしみで聞くぞ?」

 佐々木くんに言われて、少し悩んでから如月さんのことをかいつまんで話した。

 「ふーん。それで?そのなにを悩んでんの?」

 「この誘いが本気かどうか?」

 疑問系になってしまったのは私自身もなにがなんだかわからないから。

 「イケメンに誘われてるだけでも信じられないのに、一目惚れなんて。そんなこと今まで言われたことないからなんか全部が疑わしくて」

 「意外だよな。澪ってモテそうなのに」

 佐々木くんはそう言ってくれるけど、本当にないのだから反論のしようもないので話を戻す。
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