運命の人

 「うーん」

 ベッドに横になりながらスマホを手にする。
 するとその直後、スマホが着信を知らせた。

 「如月さんだ」

 でもなにを話したらいいのか、まとまっていない。
 でもでもこれを逃したらまた悩みのループにハマってしまう。

 「えいっ!」

 意を決して通話ボタンを押すと動揺しまくりの私とは正反対の、落ち着いた低く柔らかな声が返ってきた。

 「如月です」

 「あ、はい。樋口です。先ほどは」

 ありがとうございます、はおかしい気がして口を噤む。

 「今、お一人ですか?」

 「はい」

 「それはよかった」

 通話口から安心したような吐息混じりの声が聞こえた。
 もしかしてまだ佐々木くんといると思ったのかもしれない。
 先程の態度含めて佐々木くんのことを話すべきか。
 悩んでいると如月さんが話を続けた。

 「和菓子、とても美味しかったです。ご馳走さまでした」

 「食べてくださったんですね。お口に合いましたか?」

 「とても。実は和菓子が大好物でして」

 「本当に?」

 共通の話題に気分が浮き立つ。

 「私も大好きなんです!そうだ、あそこのお店の和菓子食べたことありますか?」

 そこからどこの和菓子が美味しいとか、和菓子に合うお茶はどこに売っているかなど、和菓子に纏わる話しで盛り上がり、あっという間に時間が経った。
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