運命の人
澪サイド

 今までのやり取りで確認するには今しかない。

 「気になることがあるならなんでも聞いてくれて構わないよ」

 如月さんがそう言ってくれた言葉に甘えさせてもらって。
 ただ、返ってくる答えが本当に正しいのか。
 その判断はしっかり見定めなければならないけど。

 「詐欺」

 「え?」

 思い切って口にする。

 「如月さんは詐欺師ではないですよね?」

 「詐欺…」

 如月さんが呟いた後、車内に静寂が広がった。

 「あの」

 なんでも聞いてと言ったけど、さすがに怒ったかもしれない。
 恐る恐る様子を伺うと、如月さんは無言のままコンビニの駐車場に車を停めて、ハンドルに突っ伏した。

 「すみません。失礼なことを言って」

 謝ると如月さんは首を横に振り、それから「ククッ」と小さく笑った。
 予想していなかった反応に戸惑っていると、如月さんは突っ伏した姿勢のまま、顔だけこちらに向けた。
 困ったような笑みには怒っている感じはなさそうだけど、なんで笑ったんだろうと不安が胸に渦巻く。

 「そんな顔しないで。大丈夫。怒ってないよ」

 「本当、ですか?」

 聞くと如月さんはニコッと微笑んだ。
 その笑顔に胸がキュンとする。
 でも問題が解決したわけではないと口元を引き締める。

 「彼に…佐々木くんだっけ?佐々木くんに言われたの?詐欺じゃないのか、って」

 たしかにきっかけは佐々木くんだったけど、違う。

 「私は」

 自分の気持ちを正直に伝えることに決めた。
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