運命の人

 「これ、全部如月さんが作ったんですか?」

 「料理、好きなんだ」

 とは言え、この量を作るのは大変だっただろうに。
 私が作って来たお惣菜まで並ぶとまるでビュッフェのようになった。

 「自宅でこんなご馳走が食べられるなんて。感動ものです」

 「そんな大したものではないけど。でも喜んだ顔が見られて嬉しいよ」

 如月さんの言葉と笑顔は私が考えていたことと同じで、胸がトクンと反応した。
 だって如月さんもちゃんと私のことを好いてくれていることが伝わってきたから。

 「如月さん」

 「ん?」

 取り皿と箸を用意している如月さんに想いをぶつける。

 「ギュッてしてもいいですか?」

 「え?!」

 さすがの如月さんも驚いて固まってしまった。
 でも如月さんに抱きつきたい衝動は抑えられない。
 早足で近付き、抱きついた。

 「どうしたの、突然?」

 「如月さんのこと、大好きって思ったから」

 居ても立っても居られなくて。
 ただ抱きついたはいいけど、ここからどうしよう。
 今更ながら恥ずかしくなって来て、離れるタイミングがわからない。

 「樋口さん」

 呼ばれてゆっくりと体を離す。
 でも恥ずかしくて顔を上げられないでいると、取り皿と箸を如月さんは机に置き、それから私の体を優しく抱き締めた。
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