四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!
私はどうやらラブハプ的なものに巻き込まれやすいタチらしい。

それも、どうもタイミングよく引き寄せる。

そういうのって、持って生まれるものなんだろうか?

外のほうから甲高い女の人の大声が聞こえてきて、
私達は顔を見合わせた。

「うわぁ…ひっさびさだけどやっぱあのひとの声って特徴的だね」

皐月くんが眉間に皺を寄せる。

海斗さんが立ち上がって、リビングの掃き出し窓に近寄った。

閉めたままだったカーテンの隙間から外の様子を伺う。
私と皐月くんのほうを振り返って、海斗さんは「居る」って呟いた。

「近くですか?」

「玄関の門の前。四季も戻ってきてる」

「じゃあ一緒に…」

「あー…四季、めっちゃ掴まれてるわ」

「ちょっとかいちゃん!呑気に実況してる場合じゃないって!」

「そうだな。ちょっと行ってくる」

「ぼくも行くよ」

「私も」

「お前らは危ないって」

「ダメです。私は無関係ってことはないですよね?」

「無関係じゃないからだよ。あいつがシュリちゃんに何してくるか分かんないだろ」

「そしたら守ってくれるんですよね?四季くんも、お二人も」

「もちろんだよ!」

「…あーもう!分かったよ!」

皐月くんがスクッと立ち上がって、ヒーローみたいにニカって笑った。
海斗さんは呆れ顔のままだけど、私は心強かった。

先頭に立って玄関のドアを開けた海斗さんに、四季くんとことりさんはすぐに気がついた。

「あらっ海斗!久しぶりね?」

「白々しい。わざわざ離婚したって知らせに来たのはお前だろ」

「ちゃーんと四季にも伝えてくれてたみたいでありがとう。でも、あんた全然ダメね?」

「は?」

「なんでちゃんと監視しててくれなかったのよ。四季が…こんなガキと付き合ってるなんて、計画が台無し。ま、どうせ四季は私のとこに戻ってくるんだからいいけど」

「相変わらず頭おかしいんだね!しーちゃんが戻るわけないじゃん」

「あんたも相変わらずね。つきまといガキンチョ」

「はーっ!?」

「さーつーき。こっち来い」

ことりさんに飛びかかっていきそうな勢いの皐月くんを海斗さんがなだめる。
皐月くんは八重歯を見せて、狼みたいにことりさんを威嚇した。
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