四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!
四季くんが、背中からギュッと抱き締めてきた。

「四季くん?」

「怖かったよね。ごめん」

「平気だよ。みんながいたから」

「シュリ…ありがとう。俺を信じて戦ってくれて」

「だってムリだもん。四季くんを手離すなんてできない」

「うん…」

「おーい、俺達のこと見えてるー?」

「ほんと邪魔。どっか行け」

ベーって四季くんが舌を出して、海斗さんは「この恩知らずが!」って飛びかかった。

「ってかさ、四季」

「ん?」

「お前バイトとかしてたっけ?」

「してないけど」

「どうすんだよ、あんなに大見栄きって。マジでたかってきてたらどうしてたんだよ」

「別に困んないよ。多少の貯金があんのは事実だし」

「えー、しーちゃん、なんで?」

「まぁ………小遣いとかお年玉とか」

呟いた四季くんに、海斗さんは目を細めて笑った。

「は…はは…安心したわ。お前の子どもらしいとこ見れて」

「どういう意味だよ」

「くちだけ一丁前でさ。貯金の理由は親からの小遣いとかお年玉とか。イキってなくて安心した」

「海斗さん、保護者目線ですね」

「そう言えば俺、海斗からお年玉貰ったことないわ。くれ!」

「くたばれクソガキ!」

せっかく和やかな雰囲気に戻ってたのに、
また海斗さんが四季くんを追いかけ回して、
二人はバタバタと家の中に入っていった。

「シュリちゃんっ」

「皐月くん?」

「よかったね。一件落着!」

「皐月くん、本当にありがとう。一緒にいてくれて」

ううん、って首を横に振った皐月くんは、
キラッと光る瞳で、八重歯を見せて笑った。

「シュリちゃんのこと守れてうれしいよ。四季くんには、内緒ね?」

私をからかうときの目だって、もうとっくに見抜けるようになった。

四季くんは「冗談」で済ませないだろうけど…。

知らなくてもいいはずの過去。
忘れ去りたい黒歴史。

それでも全部ひっくるめて、大切だって言ってくれた人達のために、私は生きたい。

もしもまた誰かが涙を流していたら、
今度は私が守れるように。
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