四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!
「ドレスの試着はどうする?」

「それはしてみたいです!」

「ドレスは本番じゃなくていいの?」

四季くんが笑う。

「ドレスは試着しとかなきゃ似合う、似合わないがあるじゃん!」って言った私に、
親友さんも「確かに」って笑った。

ドレス室には数えきれないくらいのサンプルがあって、
どれでも全部触って、着てみていいらしい。

「うわー…うわー…ロングも短いのも…カラーのもきれい…」

「四季くんは?どれが見てみたい?」

「どれって言われてもなぁ…強いて言うなら全部見たいけど」

「あはは。そうよねぇ。シュリちゃんは?」

「んー…じゃあコレ、かな」

じっくり選んだってきっと選びきれない。
直感で手に取ったのは、ロング丈で胸元は華奢なレースの装飾。

オーソドックスな純白のドレス。
Aラインの細い腰回りが不安だったけれど、ご飯を食べる前でよかった…。

「オッケー。じゃあ、うんと美しくしてあげてね」

親友さんが着付けをしてくれるスタッフさんに引き継いだ。

「じゃ、四季くんもこっちでタキシード着てみよっか?」

「俺もですか?」

「もちろんよ」

連れていかれる四季くんを見送って、
私も試着室に入った。

なめらかな指ざわりのドレスは、
肌にピタッと吸い付くようで、夢みたいな感触だった。

魔法をかけられていくような感覚。
自分がメルヘンの世界のヒロインになったみたい。

「とってもきれいよ」

「ほんとに…?変じゃないですか?」

「すっごく似合ってる。彼氏くん、腰抜かしちゃうんじゃない?」

「大袈裟です…」

「シュリちゃーん。どう?」

カーテンの向こうから親友さんが呼んでいる。

ドキドキしながら、カーテンをそっと開けた。
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