四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!
「庭園、噴水前、チャペル。今日使用できるのはここだけになるけど、どこにする?」

親友さんに聞かれて、私は庭園でお願いした。

緑豊かな庭園。
絵本の中の世界みたいに、鮮やかな花々が咲き誇っている。

「チャペルじゃなくていいの?」

「本番のときがいいんだよな?」

四季くんが私に笑いかける。
コクンって頷いた私に、四季くんが「とっておこうな。俺達の特別な日のために」って言った。

親友さんが「はーいっ!ちゃちゃっと撮っちゃいましょー!」ってカメラさんを促した。

「四季くん」

「ん?」

「どんな顔していいか分かんない」

「俺も」

カメラを向けられた私達はカチカチに緊張していた。

本当の結婚写真になるわけじゃないんだけど、
当然ラフな気持ちでは挑めない。

「二人ともー!この世の終わりみたいな顔してるよー!」

カメラマンさんが私達の笑顔を引き出そうとしてくれるけれど、
プロのモデルでもなんでもない私達は、意識したからってじょうずに笑えない。

「ね、二人とも。出会ったときのこと、覚えてる?」

親友さんがそばに来てくれて、私達に聞いた。
私と四季くんは同時に頷いた。

「もちろんです」

「もう一度、思い出して。このひとと一緒に居たいなーって初めて思った日のこと」

死んでしまいたかった、あの日に四季くんと出会った。

死んでしまおうとした四季くんが、
私の指に湿布を貼ってくれた。

本当に痛みが引いたのは、心のほうだった。

四季くんは笑うだろうけど、
私は本気で魔法使いだって思ったんだよ。

「四季くん」

「ん?」

「ありがとう」

「なにが?」

「全部」

「全部?」

「うん。ぜーんぶ!」

四季くんの腕に自分の腕を絡ませて、
カメラマンさんのほうを見た。

四季くんが、ふって短く息を漏らして、
ピンって背筋を伸ばす。

親友さんが「とっても素敵」って呟いた。
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