四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!
五時間目ギリギリに滑り込んで、席に着いて肩で息を切る私を、夕凪がジトっとした目で見ている。

顔の前で両手を合わせて見せたら、
呆れたような表情をして、教卓に向き直った。

それと同時に、国語の先生が入ってきた。

四季くんが一年生のとき、新卒で着任した、
柳瀬晴陽(やなせ はるひ)先生。

国語の担当が柳瀬先生のクラスは大当たりだって言われるくらい、人気のある先生だ。

「三神、遅刻しそうだからって廊下は走らないー」

教卓に着いた途端、やわらかい口調でそんなことを言われてしまった。

女子達はこれを「いじり」だと思っていて、
むしろ羨ましがられる。

「すみません」

「熱心に図書室に通ってるなぁって感心してたけど、図書室はデートスポットじゃないからな」

私、たぶん今、すごく顔が赤くなってる。

女子は先生の“ジョーク”に笑っているけれど、
私はちっとも面白くなんかない。

教科書を読む声も、
チョークを握る長い指も、
私を見て、ニッて上げる口角も、
ぜんぶ、ぜんぶ大嫌い。
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