甘い鎖にとらわれて。
「はは、綺麗?ありがとう?」
さっぱりと、それでいて柔らかく微笑む彼は、女の子から絶大な人気を得ているんだろうな。
告白されてたっていう話も、よく実帆ちゃんから聞くし。
でも、なぜか。なぜか、彼女がいるという話は聞いたことがない。
実帆ちゃん情報網いわく、ぜんぶ断っているのだとか。
こんなに綺麗な顔して、勿体ないなあ……と内心思う。
叶わない恋でもしてるのかな。
「……柚原さん?」
「っううん、ごめんなんでもない」
うっかりまた見すぎてしまった。
不思議そうに首を傾げる彼は、本当にすべてが完成されている王子様なんだと思わされる。
ふと気づくと、空が朱色に染まっていた。
「私、もう遅いから帰るね。また明日」
「明日は土曜日だから学校ないよ」
「あっ……あはは、また月曜日」
「うん」
沈み始める大きな夕日を背に、家へと歩く。
「自分が甘いくせに、甘いもの苦手って……はは、変なの」
ーーーそんな言葉には気づかずに。