甘い鎖にとらわれて。


数秒、時が止まったような感覚に陥る。


目の前で私と同じく、驚きで固まっている人物は。



「っえ、深月くん……っ!?」




なぜか、きらきらのオーラを纏った王子様だった。




「"柚原"って表札に書いてあったからもしかして、とは思ったけど……まさか本物だったとは」



そう落ち着いて話す彼とは違って、私はぽかんと放心したままパニック中。



え、と…うそでしょ?


引っ越してきた?同じアパートに?



「あ、これお菓子です、どうぞ」


「あ、ありがとう……」



すっと渡されたお菓子。

よく見ると、テレビで見たことがあるとっても有名なもの。


それに、あまり甘くないやつ……だ。偶然?


昨日の会話を思い出して、深月くんの優しさが胸に染みる。ぽかぼかと温かくなった。


それに、一度でいいから食べてみた買ったものだから。



「喜んでもらえたようで良かった」


「……っあ、うん…!」



目をきらきらさせていたのがバレていたのか、いないのか。


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