甘い鎖にとらわれて。
「ーーー柚原さん、ノート回収していい?」
「…あ、うん、これです」
「はは、何で敬語なの」
それは、深月くんのせいでしょ……って言いたいのを寸前でのみこむ。
言ったら周りの女の子たちからじろりと睨まれてしまいそう。
目の前でしばらく立っていた彼は、不思議そうにして私の机から離れて行ってしまったけど、なんとなくその姿を目で追った。
ーーー深月 透夜くん。
学校でその名を知らない人はいないであろう有名人。
小さな顔、ぱっちりとした目、薄い唇に、すっと整った鼻筋。
そして、一回も染められたことがなさそうなサラサラの黒髪。
その整いすぎた顔は、神様がめいいっぱい力を込めて作ったみたいで、"かっこいい"よりも"綺麗"という言葉のほうが似あっている。
加えてクラス委員を務めていて優しい。一見まじめで堅そうなのに、彼を囲む人たちはみんな楽しそうに笑っていて、入学してからあっという間に人気者。